理事コラム Vol.1

「本当の課題とは」

今回からスタートする『理事コラム』。理事それぞれが自由なテーマで個人的な思いを綴っていきます。では始めましょう。
第一回は上田が担当します。
ロープ業界の経営者が抱える本当の課題について少しシビアに書いてみました。
近年、ロープ高所作業の需要は年々高まっています。建築物の維持修繕、橋梁点検、鉄塔塗装、風力発電、看板工事など、その活躍の場は確実に広がっています。
一方で、業界の発展とともに大きな課題も進行しています。
それは、「持続可能なビジネスモデルをどう構築するか」という課題です。

その課題は大きく、単価と人材だと思います。
ロープ高所作業は足場と比較して機動力が高く、コスト面でも優位性があります。しかし、その優位性が時として過度な価格競争を生み出し、業界全体の価値を下げてしまう危険性も抱えています。安さだけを追求した先に豊かな未来はありません。

ロープ高所作業は仮設費用を抑えられるため、発注者にとって魅力的な工法です。しかし、その削減できたコストがすべて値引き競争に使われてしまえば、最終的にしわ寄せを受けるのは我が身です。
コストを下げ、利益を抑えた結果、こうなります。

・安全対策を妥協する。
・装備コストを削る
・安全教育、レスキュー訓練を行えない。
・福利厚生や賃金が上がらない。

単価を下げて受注する流れは一時的には仕事を生むかもしれません。しかし長期的には安全管理の低下を招き、人材確保もできない、結果として業界全体の衰退につながります。
「目先の仕事」ではなく「未来のビジョン」を見据えた経営でなければなりません。
安全管理体制の構築、機能的な装備の導入、レスキュー訓練、これらは利益を圧迫する経費ではなく、会社の未来を守るための投資です。
その課題を解決するのは良い単価で受注して利益を出す、これに尽きます。
良い単価には価値が必要です。その価値をどう作るかを日々追求しなければいけません。
「継続的に利益を確保すること」これが経営者の最も重要な責任です。
その責務に対して覚悟を持って全力で仕事に向かっているかどうかです。
利益追求が目的ではありません。そこに従事している仲間たちを豊かにし、社会に価値を提供する事こそが会社の本当の目的です。その循環を生み出すために欠かせないのが利益です。

そして現在、多くの業界で人手不足が問題となっていますが、ロープ業界も例外ではありません。
私が考える従業員が定着するために必要な要素は、大きく5つ。

1.雇用の条件
2.健全な環境
3.良好な人間関係
4.社会的なやりがい
5.社長のビジョン

これらすべてを整備するのは簡単な事ではありませんが、どれか一つでも大きく欠けると、離職の原因となります。
離職の責任は全て経営者にあります。それくらいの自責の念が必要です。
職人会社は人材が最も大切です。従業員を本当に大切にできているか。
特に若い世代は賢く正直です。私のような昭和世代が我慢してきたことを意味の無いものだと感じています。『それやる意味あります?』と本質を突いた震えるような質問を投げかけてきます。我々は時代の最先端にいる彼らから令和の感覚を学ぶことが出来ます。
人材育成には時間がかかりますし、講習や訓練には費用もかかります。
しかし、会社や業界の未来を作るのは若手人材です。
教育を経費と考えるのではなく、未来への投資と考えられる会社が、長期的に成長していくのだと思います。

従業員には3つの欲求があると言われています。
生存欲求、関係欲求、成長欲求、これが満たされたうえで貢献欲求が出てきます。
安心して安全に働ける環境、社長や同僚との良好な関係、学べて成長できて希望が持てる、そして自分が何かの役に立っているという実感、これを考えるべきです。
最後に、私はロープ業界においても「三方よし」の考え方が重要だと考えています。
発注者よし。施工会社よし。業界よし。

発注者は適正な品質と安全を得る。施工会社は利益を確保し、人材育成や設備投資を行える。そして業界全体として技術と安全の水準が向上し、発展していく。
この循環ができて初めて、本当の意味で持続可能なビジネスモデルが成立します。
価格だけで仕事を選ぶ時代から、価値で選ばれる時代へ移行しなければなりません。

私たちは先人たちが築いてきた技術と文化の上に立っています。
今の私たちにはそれを進化させ、次の世代へ、そのバトンを渡していく責任があります。
ロープ業界はこれからますます社会に必要とされます。その未来を明るいものにするためには、一社だけが成長するのではなく、業界全体が成長し続ける仕組みを作らなければなりません。
我々が目指すべきものは、「顧客満足・働く人の幸せ・会社と業界の成長」の全部を両立させる経営そのものです。
そしてその先にこそ、若い世代が憧れを抱き、誇りを持って働けるロープ業界の未来があるのではないでしょうか。

上田雅人
上田 雅人

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